仏壇屋さんに行くと、「モダン仏壇」「家具調仏壇」というキャッチフレーズの仏壇がたくさん並んでいます。
「洋間に合うデザインを追求」
とかって書いてあるんですけど・・・
これにとっても違和感があるのは、私が住宅業界で商品開発に携わっていて、多くのインテリアコーディネーターの方やスタイリストの方と仕事をしてきたせいかもしれません。
商品開発という部門に居たので、海外のインテリアの写真集とか資料が山ほどありましたし・・・
海外の住宅を視察したり、ホテルやレストランのインテリアを学んだりしたこと・・・
それと、もうひとつは、私が在籍した会社が割と高級・高額な住宅を得意としていて、お金持ちのお客様が多かったせいかもしれません。
トータルなインテリアコーディネートを望まれるお客様には、仏壇屋さんに置いてある「モダン仏壇」「家具調仏壇」はとても似合う物とは思えませんでした。
高級住宅だから、部屋も広いだろう・・・
だから大きな仏壇でも、そのインテリアに合っていればいいのか?
というと、そんなことはありません。
広い部屋だから家具が大きいかというと、すっきり暮らすためには
「物を置かない」
ということや、家具と家具の間にゆとりのスペースがある
といったこともあるのです。
「ガラスキャビネットの飾り棚の中に仏壇の機能を収める」
とか
「ライティングビューローの中に仏壇の機能を収める」
といった、既存の家具を仏壇化するアイデアも、当初はいっぱいありましたし、実際にアンティーク家具のリプロダクトの物に、仏壇の機能を入れてみようと試みたこともありました。
いずれも、
「家具調仏壇」という既存の仏壇を「洋風の家具に見せる」
という発想ではなく、
洋間のインテリアにあっておかしくない、むしろふさわしい家具の中に仏壇を収める方が自然だと考えたのです。
そもそも「家具調仏壇」という言葉に抵抗がありましたし。
それは「仏壇って家具じゃないの?」
という素朴な疑問です。
元々、仏壇の発祥って、江戸時代くらいにお寺の檀家の方が
「自分の家も、お寺と同じようにしたい」
という発想から、
「ミニお寺=仏壇」
として家具化かたのが始まりだったのですから、
「家具調仏壇」
という表現自体が仏壇屋さんとか、仏壇メーカーが「売らんがため」に付けた名称です。
別に、マーケティング戦略上、決して間違った選択でも、間違った行為でもないのですが、私にはとても違和感がある言葉だと思うのです。
だから、いつか自分で、多くの人に愛してもらえる「インテリア仏壇」を作りたい・・・
そんな気持ちが、ずっと頭の隅にありました。
だからこそ「家具調仏壇」ではなく「インテリア仏壇」を作りたかったのです。
ライティングビューロー仏壇やガラスキャビネット仏壇を作れば、間違いなくインテリアコーディネートできる仏壇にはなるのですが・・・
デザイン×サイズ×色
のバリエーションを考えると、多くのお客様の好みに対応するためには、ものすごくたくさんの商品開発をしなければなりません。
そこで着眼したのが「ウォールミラー(壁掛け鏡)」だったのです。
どんな洋風のインテリアにも、フレームデザインと色を変えれば対応できる
そう考えたからなのです。
実際に、薄型インテリア壁掛け仏壇「鏡壇”ミラリエ”」を商品化して、実物を見て、触っていただいた方からは、高い評価、高評価をいただきました。
もちろん、大きな和室があって、立派な仏壇をお持ちの方からは否定的な意見もいただきましたが、住環境や価値観が異なるのですから、それを否定するつもりもありません。
ただ・・・
「姿見の鏡、自分を映す鏡の電気を着けたら中が仏壇で、ご先祖様から見られてるって、気持ち悪い」「怖い」
というご意見もたくさんいただきました。
ちょっと残念なんですけど、こういった意見を持たれる方って、インテリアに興味がないか、インテリアの知識が無いかたなので、仕方のないことです。
インテリアのウォールミラーって、自分を写すのが目的ではないことは、このブログを読んでくださっている方は既にご存知だと思うのですが・・・
壁の装飾として、ヨーロッパで古くから用いられてきたのは、
・昼間は窓から間接光を反射して室内を明るくすること
・夜間はキャンドルやランプの灯りを反射して室内をあかるくすること
といった、生活の知恵から生まれた住文化なのです。
玄関ホールに賭けられている鏡には、空間を広く見せるとか、空間を明るくするという鏡の機能以外に、もちろん外出時の身だしなみチェックも含めた姿見としての機能もありますが、まさか玄関の鏡を仏壇にしようとか、仏壇機能を持つ壁掛け鏡を玄関やパウダールームに設置しようという発想はないと思うのです。
(もちろん、お客様がそういった使い方をされることに、反対はしませんけど・・・)
あくまでも、リビングやダイニングといった家族団欒のスペースの中心にインテリア仏壇があってほしい・・・
そんな思いで開発しました。
でも、こういったインテリアの基礎知識の「啓蒙」も同時に進めていかなければならないわけですから、まだまだ開発は「順調に難航」しております。
だからこそ・・・ファイトも湧くんですけどね。